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2008年4月16日 (水)

自殺報道を考える-2000年WHO勧告と医療機関の対応

 自身で発生させた有毒ガスで自殺を図るという事例が多く報道されています。ひと頃に比べると、報道は抑制的で、センセーショナルなあつかいは少ないようです。とはいえ、良く検討された、あるべき報道の在り方にてらすと、求められる水準に達する内容を持ったものは、多くないように思われます。求められる内容とは、自殺を思い留まらせるベクトルを持ったもの、ということです。
 WHOは2000年に自殺に関する対応についての手引きを公表しています。7つの立場・分野ごとに、自殺対策シリーズとして必要な知識や対応を簡潔にまとめたものです。7つのテキストの中には、医療者や介護者向けのものもあり、自殺についての統計的な知識から、自殺の原因、特徴的な行動や言動。自殺についての誤解や声掛けの方法、類縁疾患との関わり、専門家との連携方法など多岐にわたります。
 勧告の一つに、「マスメディアのための手引き」があります。マスメディアによる報道は、大きな影響力があることを強調し、「適切で、正確で、援助するような方法で自殺が報道されるならば、自殺によって生命が失われるという悲劇的な死を予防することに役立つ【訳は、「平成14 年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)自殺と防止対策の実態に関する研究研究協力報告書」による。以下同じ】」としています。
 内容は、信頼できる情報源、統計のとりあつかい方から説き起こし、報道するにあたっての一般的な原則、有名人などの特殊な場合の対応などを含みます。特に、自殺をあらゆる意味で、肯定的あるいは、わずかでも意味のある行為としてあつかうことに、慎重な判断を要求しています。
 最後に、まとめとして簡潔に、報道する際のエッセンスを提示しています。全文を紹介すると、
【ぜひすべきこと】
 ・事実を報道する際に、精神保健の専門家と緊密に連絡を取る。・自殺に関して「既遂」(completed)という言葉を用いる。「成功」(successful)という言葉は用いない。・自殺に関連した事実のみを扱う。・一面には掲載しない。・自殺以外の他の解決法に焦点を当てる。・電話相談や他の地域の援助機関に関する情報を提供する。・自殺の危険因子や警戒兆候に関する情報を伝える。
【してはならないこと】
 ・遺体や遺書の写真を掲載する。・自殺方法を詳しく報道する。・単純化した原因を報道する。・自殺を美化したりセンセーショナルに報道する。・宗教的・文化的な固定観念を当てはめる。・自殺を非難する。
 各項目を読むと、当然と思うことがほとんどですが、今回の事態の報道で検証してみると、不十分な点が目に付きます。新聞では勧告を意識した記事も見られます。ですが、平均してみると、テレビ報道などでは、「事実のみを扱う」という点では考えられていますが、逆に、積極的に自殺防止につながる情報の提供が不十分に思われます。ネットという膨大な情報の倉庫が、手軽に利用できる昨今であってみれば、事実だけの報道は、ネットでの情報収集に導く切っ掛けにもなります。勧告の精神に従えば、報道は自殺を考える人やその縁にある人が見聞きしていることを前提に、そこから引き戻す内容を含むことが必須です。
 その意味では、どんなに短い事実報道であっても、字幕で相談機関を紹介するなり、他の相談手段について一言コメントするなりの努力が必要になると考えます。今回の有毒ガスという手法の場合は、第三者を巻き込む事例は、片手の指では収まりません。「危険」と張り紙で、防ぐことが出来る問題ではないことも、もっと強調されて良いでしょう。
 さて、相談機関の提示という面では、医療機関も努力が必要です。自殺防止だけでなく、DVや各種ハラスメントに関して、被害の治療などで医療機関を利用する場合は意外に多いものです。受け答えや、問診、診療の中で、そうした事態の兆候や跡を見逃さない注意は大切です。さらに、施設的にも、トイレなど被害者が1人になれる可能性が高い場所に、相談機関のポスターを掲示するなど、積極的に取り組むことが必要です。
 このブログでもその原則に従って、不十分ですが下記の行を加えます。
 自殺に関する主な相談機関
 ・東京自殺防止センター 03-5286-9090 20時から6時
 ・東京いのちの電話   03-3264-4343 24時間
 ・http://www.find-j.jp/ では全国の「いのちの電話」を調べられます

PREVENTING SUICIDE SERISE ;WHO 2000

A RESOURCE FOR TEACHERS AND OTHER SCHOOL STAFF

http://www.who.int/mental_health/media/en/62.pdf

A RESOURCE FOR PRIMARY HEALTH CARE WORKERS

http://www.who.int/mental_health/media/en/59.pdf

A RESOURCE FOR GENERAL PHYSICIANS

http://www.who.int/mental_health/media/en/56.pdf

A RESOURCE FOR MEDIA PROFESSIONALS

http://www.who.int/mental_health/media/en/426.pdf

A RESOURCE FOR PRISON OFFICERS

http://www.who.int/mental_health/media/en/60.pdf

A RESOURCE FOR COUNSELLORS

http://whqlibdoc.who.int/publications/2006/9241594314_eng.pdf

A RESOURCE AT WORK

http://whqlibdoc.who.int/publications/2006/9241594381_eng.pdf

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